不登校の生徒を教えるときに大切な5つの心がまえ

家庭教師として不登校の生徒を担当することになったとき、どうすれば良いのか悩む人も多いでしょう。教える内容が同じでも、学校に通えていないという背景があると、何をどこまで踏み込んでいいのか分からなくなるものです。
しかし、不登校だから「勉強ができない」や「やる気がない」ということはありません。家庭教師1対1で指導できるからこそ、指導時間は生徒にとって安心できる学びの場となる可能性もあります。ここでは、不登校の生徒を教えるときに大切にしたい3つの心がまえを紹介します。
1.「勉強」よりも「信頼関係」が先
不登校の生徒は、学校や集団生活で何らかのつまずきやストレスを抱えていることがほとんどです。そのため、「教える」よりもまず「安心して話せる人であること」が何よりも大切です。家庭教師として初めて接するときには、いきなり本題に入らず、趣味や日常の話題から会話を始めてみましょう。すぐに距離が縮まらなくても慌てないでください。焦らず、少しずつ「この先生となら大丈夫かも」と思ってもらえる関係性を築くことが第一歩です。
2.学習ペースは生徒の気持ちが最優先
学校の進度に合わせて教えるべきか、自分のペースでやらせるべきかで指導上、悩むこともあるかもしれません。結論から言えば、不登校の生徒には「本人がやりたいと思ったときに、やれる範囲から始める」のが良いでしょう。たとえ1回の指導でワークを1ページしか進められなかったとしても、それは大きな前進です。また、調子が良い日・悪い日で波があるのも当然と捉え、無理な指導はせず、その日の気持ちに寄り添った指導を意識しましょう。3.小さな達成感を一緒に喜ぶ姿勢を忘れない
不登校の生徒にとって、「できた」「わかった」と思える体験は、自己肯定感の回復に大きな役割を果たします。どんなに小さな成果でも、「よくできたね」「すごい!」といった肯定的なフィードバックを重ねていくことが重要です。学力を伸ばすだけでなく、「この先生と一緒にやってよかった」と思ってもらえる関係を目指すことが、結果として学習意欲にもつながります。
4.「否定しない姿勢」で自己開示を促す
不登校の生徒は、過去の人間関係や学校生活の中で“否定される体験”をしてきたことが少なくありません。そのため、家庭教師が何気なく口にした言葉が、生徒にとっては「また否定された」と感じさせてしまうことがあります。たとえば「それじゃダメだよ」ではなく「なるほど、じゃあこうしてみるのはどうかな?」と伝えるようにするなど、選択肢を示しながら寄り添う表現を心がけましょう。否定されない安心感の中でこそ、生徒は自分の気持ちや本音を少しずつ話し出してくれます。
5.「学ぶ理由」を一緒に考える
不登校の生徒は、「なんで勉強しなきゃいけないの?」という気持ちを抱えがちです。学校に通っていない分、“学ぶ意味”を実感しづらくなっていることも多いです。そんなときは、「今やっていることが、将来どうつながるか」や、「学ぶことで得られる自由や可能性」を一緒に考える時間をつくってみましょう。無理に目標を押しつけるのではなく、一緒に考える姿勢”が大切です。自分で納得したとき、生徒は本当の意味で前を向き始めます。
不登校の生徒を支援できる家庭教師のニーズは高まっている
ここ数年で、不登校の児童・生徒の数は増加傾向にあります。文部科学省の調査でも、令和5年度には全国で約34万人近くの小中学生が不登校状態にあるとされています。高校生も約6万9千人です。その背景には、いじめや発達特性、家庭環境、コロナ禍以降の学びの多様化など、さまざまな要因があります。そんな中、家庭教師には「勉強を教える存在」だけでなく、「安心して学べる場所をつくる支援者」としての役割がますます期待されるようになっています。特に塾などの集団環境が難しい生徒にとって、一対一で丁寧に向き合える家庭教師は、最も適した学習サポートの形のひとつです。
不登校の生徒への理解を深め、寄り添える指導ができる家庭教師は、今後ますます必要とされる存在です。家庭教師バイトをしている大学生にとっても、大きなやりがいを感じられる分野と言えるでしょう。