やる気が出ない生徒にどう向き合う?教育心理学で考える解決策

家庭教師をしていると、「やる気がない生徒」にどう対応すべきか悩むことがあります。何を言っても響かない、宿題をやってこない、そもそも机に向かう気すらない。そんな生徒に対して、どのように指導すればよいのでしょうか。こうした問題に取り組む際に、教育心理学が指導に役立つことがあります。本記事では、やる気のない生徒への対応策を、心理学的な視点から解説します。
教員採用試験でも問われる教育心理学は家庭教師にも役立つ
教育心理学は、学校教育の現場だけでなく、家庭教師の指導にも大いに活用できます。教育心理学は、学習者の行動や心理的要因を科学的に分析し、より効果的な指導方法を見つける学問です。実際に、教員採用試験では「生徒の学習意欲を高める方法」や「動機付け理論」などが頻繁に出題されています。教職課程をとる際に教育心理学を勉強する機会があるはずです。例えば、バンデューラの『自己効力感』やデシとライアンの『自己決定理論』など、学習者のやる気や成長を促す理論が問われることが多いです。これらの知識は、学校現場での指導だけでなく、家庭教師として生徒の学習意欲を高める際にも役立ちます。教職課程をとっていない学生でも以下のような書籍で勉強できます。
・『教職をめざす人のための教育心理学』
・『児童生徒理解のための教育心理学[第2版]』
これらの書籍はお金もかかるので大学生なら図書館で教育心理学の本を借りる、教職課程をとっている学生ならば指定されている教科書も参考になります。
「やる気がない」原因を理解する
やる気がない生徒にはさまざまな理由があります。例えば、目標が明確でないと、何を目指せばよいのかわからず、勉強に対するモチベーションが生まれにくくなります。また、過去の失敗経験が積み重なることで、「どうせやってもできない」と思い込んでしまい、努力すること自体を諦めてしまうケースもあります。これは教育心理学で「学習性無力感」と呼ばれる現象です。
さらに、外発的な動機付けが不足している場合も、やる気が低下する要因となります。テストで良い点を取ればご褒美がある、先生や親に褒められるといった報酬がなければ、取り組む意欲が湧かない生徒も少なくありません。学習環境の問題も影響し、家庭内の環境や友人関係が学習への集中を妨げている場合もあります。
やる気の低下の原因を特定し、それに応じた対応をすることが、指導の第一歩となります。
自己肯定感を高める
「自分はできる!」という感覚(自己効力感)を持たせることが、学習意欲向上のカギとなります。自己効力感を高めるためには、まず小さな成功体験を積ませることが効果的です。いきなり難しい問題を解かせるのではなく、確実に解ける問題から始めることで「できた!」という実感を持たせることが大切です。また、具体的なフィードバックを行うことも重要です。「よく頑張ったね」と漠然と褒めるのではなく、「この計算は正確にできていたね」と、具体的なポイントを示すことで、達成感をより強く感じられるようになります。
外発的動機付けと内発的動機付けをうまく活用する
学習意欲を高めるには、外発的動機付けと内発的動機付けを適切に組み合わせることが重要です。外発的動機づけ:テストの点数やご褒美といった外部の要因によって行動を促す方法
内発的動機づけ:学習そのものを楽しいと感じたり、達成感を得ることでやる気を引き出す方法
やはり良い成績が取れて褒められるとやる気なります。できない教科で悪い点数ばかりつくと苦手意識が生まれてしまうものです。生徒の苦手科目を指導するときは問題の難易度を下げて正答率をあげて小テストでも高い点数が出るようにすると外部の要因でやる気が出ます。これが外発的動機づけを利用した指導です。しかし、報酬がなくなるとやる気が低下する「アンダーマイニング効果」が起こることがあります。
そこで、内発的動機づけに基づいた指導にも取り組みましょう。例えば、数学の問題を解く際に、生徒の興味のある話題と結びつけることで、単なる暗記ではなく、理解を深めながら学ぶ楽しさを感じさせることができます。
英語なら例えば「自分の好きな映画やゲームのセリフを覚える」ことで、英語への興味を高めることができます。また、海外のニュース記事を読んで内容を要約する、英語で日記をつけるなど、実生活に結びつけた学習を取り入れることで、学ぶ意欲を自然に引き出せます。
最初は外発的動機づけを利用しつつ、内発的動機づけに移行するのが良いでしょう。