家庭教師も知っておきたい指導に役立つアクティブリコールとは?
家庭教師をしていて、生徒が指導内容を覚えられなかったり、すぐに忘れてしまったりすることはないでしょうか。家庭教師が工夫して分かりやすく説明しても生徒に定着しなければ意味がありません。そんな悩みを解決してくれるのが、「アクティブリコール」という学習法です。認知心理学の研究から生まれたこの手法は、記憶の定着と長期保持に驚くほど効果的だと注目を集めています。本記事では、アクティブリコールの基本的な内容から、家庭教師が実践できる具体的な方法まで解説します。
アクティブリコールとは?
アクティブリコールとは、簡単に言うと「能動的に思い出す」という学習法です。英語のアクティブ(能動的な)とリコール(思い出す)を組み合わせた言葉で、日本語では「想起学習」とも呼ばれます。従来の学習法では、教科書を読んだり、講義を聞いたりと、情報を受動的に取り入れることに重点が置かれていました。しかし、アクティブリコールでは、学んだ内容を自分の力で思い出すことを重視します。具体的には、以下のようなプロセスを踏みます。
① 教材を読んだり、講義を聞いたりして情報をインプットする
② 一定時間が経過した後、教材を見ずに内容を思い出してアウトプットする
③ 思い出せなかった部分を確認し、再度記憶に定着させる
つまり、インプットした直後ではなく、時間を置いてから能動的に思い出すことが重要です。
アクティブリコールが効果的な理由
アクティブリコールが効果的には理由は、以下の2点です。① 記憶の定着が促進される
情報をインプットしただけでは、記憶は一時的なものにとどまります。それを長期記憶として定着させるには、能動的に思い出すことが重要です。アクティブリコールを行うと、脳内の神経回路が強化され、シナプスの結合が強まります。これにより、記憶が定着します。
②記憶の保持期間が長くなる
アクティブリコールのもう一つの利点は、記憶の保持期間が長くなることです。
通常、私たちは新しく学んだ情報の多くを忘れてしまいます。しかし、アクティブリコールを行うことで忘れづらくなります。思い出す作業を繰り返すたびに記憶が強化され、長期的に定着します。
家庭教師にできるアクティブリコールの実践法
アクティブリコールは、一見すると自学自習向きの学習法に思えるかもしれません。しかし、工夫次第で家庭教師の指導にも取り入れることができます。ここでは、具体的な実践法をいくつかご紹介します。① 質問形式で知識を引き出す
生徒に教えた内容を、後日質問形式で確認してみましょう。教科書やノートを見ずに答えられるかどうかがポイントです。例えば、前回の授業で扱った英単語なら、日本語の意味を言って英単語を答えさせます。数学の公式なら、使い方を聞いて公式を紙に書いてもらうのも良いでしょう。
② 要約や説明をさせる
生徒に学習内容を要約させたり、自分の言葉で説明させたりするのもアクティブリコールの一種です。例えば歴史なら、その日に学んだ出来事や人物について、生徒にまとめてもらうことが考えられます。数学なら、解き方の手順を紙に書いてもらうのも良いでしょう。
要約したり知識を使ったりする過程で、生徒は学んだ内容を能動的に思い出し、整理する必要があります。これにより、知識の定着度が増すだけでなく、理解も深まるというメリットがあります。
③ 間違い探しや穴埋め問題を出す
生徒に間違い探しや穴埋め問題を解かせるのも、アクティブリコールの一種です。例えば、英文法の授業の復習として、わざと間違いを含んだ英文を作成し、その誤りを指摘させます。また、重要語句を空欄にした穴埋め問題を用意し、適切な言葉を入れさせるのも効果的です。
④ 定期的な小テストを実施する
アクティブリコールを習慣化させるには、定期的な小テストが有効です。授業の始めや終わりに、簡単な確認テストを行うのがおすすめです。テスト範囲は、前回の授業内容だけでなく、もう少し前に学習した事項も含めると良いでしょう。時間を空けて復習することで、記憶が定着しやすくなります。
アクティブリコールを効果的に行うコツ
アクティブリコールを効果的に行うためのコツがあります。まず、取り組みやすい難易度で課題を設定しましょう。簡単すぎては効果が薄く、難しすぎては挫折してしまいます。また、間隔を適度に空けて復習することも効果的です。復習の間隔を徐々に長くしていくことで、記憶の定着率が上がります。例えば、授業直後、1日後、1週間後、1ヶ月後と、段階的に間隔を空けて確認テストを行うのが理想的です。もちろん、生徒の学習ペースに合わせて柔軟に調整してください。