心理的リアクタンスとは?生徒自身に選択させる指導
家庭教師、塾講師、学校の先生、スポーツクラブのコーチなど指導する立場になってから、よくやりがちなのが理由も言わずに一方的に「とにかくやってみろ!」と言ってしまうことです。もちろん素直に聞いてくれる生徒もいますが、中には
・今からやろうと思っていたのに…
・何となく人から言われるとやる気が削がれる
このように感じてしまう生徒もいます。一方で教える側も
・どうしてちゃんと聞いてくれないの?
・やる気ないの?
と思ってしまうかもしれません。このように教える側と教わる側のすれ違いを感じている人に理解してほしいのが「心理的リアクタンス」です。
心理的リアクタンスとは?
人は基本的に多かれ少なかれ「自分の行動は自分で決めたい」と考えています。例えば学生の頃、「早く夏休みの宿題に取りかかりなさい」と保護者や先生に言われたことはないでしょうか。このように言われてしまうと
「せっかく、自分から夏休みの宿題をしようと思ったのに何だかやる気が亡くなってしまった…」
と感じてしまいます。このように自分で進んでやろうとしていたのに、自分の行動を他人に決められてしまい、「選択の自由を奪われた」と感じ反発する態度をとってしまうのが「心理的リアクタンス」です。
何かに自分の行動の自由を脅かされたり、実際に自由を奪われたと感じてしまったりと、その自由を回復しようとするのです。
生徒自身が意思決定することが大切
「とにかくやってみろ!」、と指導をしてしまうと生徒の「心理的リアクタンス」が働いてしまい、・今からやろうと思っていたのに…
・何となく人から言われるとやる気が削がれる
このように感じてしまう可能性があります。
教える側からすれば「とりあえず素直に自分のいう通りにやってくれれば楽なのに…」と感じてしまうかもしれません。
しかし、生徒の意思決定を無視して「とにかくやってもらおう」という指導では、なかなか伸びない生徒もいます。
そこで大切なのは教える側と教わる側が、しっかりと対話をすることです。課題を一緒に考えて浮き彫りにして生徒自身が、その課題を乗り越えようとする姿勢を育てましょう。
心理的リアクタンスを回避するには?
心理的リアクタンスを回避しながら指導するには、どうすれば良いのでしょうか。例えば指導をする際に選択肢を与えてあげるのは有効です。
例えば英単語力を伸ばしたい場合に、ただ「毎日、英単語帳の単語をそれぞれ10回書いてきてください」というのではなく
・月末に英単語のテストをするから70点以上取れるように勉強しておいてね
・英単語帳の単語をそれぞれ10回書いてきてください
など2〜3の選択肢を生徒に与えて、生徒に選んでもらうと心理的リアクタンスが生じづらくなるでしょう。
他にも
・英単語のテストを週に何回する?
・英単語を覚えるのに、何かやってみたい教材はある?
など、生徒自身が自分で決めたという実感が持てるように話を進めることも有効です。
心理的リアクタンスには個人差がある
心理的リアクタンスは誰しも少なからず持っています。しかし、注意したいのは、個人差があるということです。なんでも自分で決めて自分で行動したいという生徒もいれば、素直に言われたことをやる方が良いという生徒もいます。家庭教師をする際に大切なのは、目の前にいる生徒の性格や特性に向き合うことです。
心理的リアクタンスを意識しすぎて、具体的な指導がなかなか始まらない、進まないとなってしまったら本末転倒です。家庭教師の強みは生徒それぞれにオーダメイドで個性にあった指導ができることです。
そのため実際に指導をする際には、心理的リアクタンスを意識しながらも「選択肢を与えるとき」、「あえて、選択肢を与えずに課題を課す」、この2つをうまく使い分けていくことが重要になってきます。
家庭教師の指導の面白いところは、生徒それぞれに性格や個性があり、過去の経験則や指導がそのまま通用しないことがあるところです。心理的リアクタンスを意識しつつ、目の前にいる生徒の性格や反応にしっかり向き合えるかどうかが、家庭教師として指導がうまくできるかどうかの鍵になるでしょう。
まとめ
心理的リアクタンスとは、「自分の行動の自由を脅かされたり、実際に自由を奪われたと感じてしまったりと、その自由を回復しようとする性質」のことです。一方的な指導ばかりでは生徒はなかなかついてきてくれません。しかし、心理的リアクタンスには個人差があり、うまく生徒の自主性や選択肢を重んじるときと、あえて強制的に課題を与えるときをうまく使い分けることが大切です。